SNSに感想を書くたび「みんなと同じ」になってしまう人へ、自分の言葉で語る技術を教えてくれた一冊『なぜあなたの感想はふつうなのか』を読んで、感想を人まかせにするのをやめた理由
😳 「神映画」しか言えなかった夜
公開初日に観に行った映画の感想を、興奮のままXに投稿したことがある。「泣ける」「神映画」「今年ベスト」。書いた瞬間は満足していたのに、タイムラインを開いたら、同じ映画の感想欄が「泣ける」「神映画」「今年ベスト」で埋め尽くされていた。一字一句とまでは言わないけれど、語彙も熱量もほとんど同じ。自分の感想のつもりで書いたものが、実は誰でも書けるテンプレートだったんだと気づいて、けっこう恥ずかしくなった。
僕はドラマも映画も好きでよく感想を発信するほうだったけれど、思い返すと「良かった」「刺さった」「考えさせられた」というような、輪郭のぼやけた言葉ばかり使っていた。感想を書いているつもりで、実は何も語っていなかったんじゃないかと思うようになった頃、書店で目に留まったのが、お笑いネタ作家・YouTube解説クリエイターとして活動する大島育宙さんの『なぜあなたの感想はふつうなのか 独自の視点で語る技術』だった。
📖 「センスの問題」ではなく「技術の問題」だと教えてくれる本
この本の良さは、「独自の視点を持てるかどうかはセンスや才能の話」にしなかったところだ。感想が量産型になってしまうのは、感受性が乏しいからではなく、そもそも「自分の反応を観察する技術」「他人と比較する技術」を知らないだけ、という捉え方をしている。だからこの本は読んで「なるほど」で終わらせず、次に何かを観たり読んだりしたときに、実際にやってみたくなる具体的な視点をいくつも提示してくれる。感想を書くこと自体が苦手だった僕にとって、これは知識というより実践に近い本だった。
①「良かった」で止まらず、「なぜ良かったのか」を1段掘る
まず刺さったのは、多くの人の感想が「良かった/悪かった」という評価だけで止まっていて、そこから先の「なぜそう感じたのか」を掘っていない、という指摘だった。同じ場面を見ても、人によって「良かった」の中身はまったく違うはずなのに、言葉にする段階で誰でも使える形容詞に丸められてしまう。僕はこれを読んでから、感想を書く前に「具体的にどのセリフ、どのカットで心が動いたか」を一つだけ思い出すようにしている。それだけで、書く言葉が明らかに自分だけのものに変わってきた。
② 感想は「自分の記憶」との比較から生まれる
もうひとつ印象的だったのが、独自の視点というのは新しい発見をすることではなく、目の前の作品を「自分の過去の経験・他の作品の記憶」と結びつけることから生まれる、という考え方だった。僕はずっと「人と違うことを言わなきゃ」と気負って、無理に奇をてらった感想を絞り出そうとしていたけれど、実際に必要だったのは、自分の中にある個人的な体験や記憶を持ち出すことだったんだと気づかされた。今では、感想を書くときに「これは自分のどんな経験と重なるか」を一度考えるようにしている。
③「みんなの感想」を先に見ないという選択
作品を観たあとすぐにSNSで他人の感想を検索してしまう癖についても、本書は触れていた。他人の感想を先に読んでしまうと、無意識のうちにその言葉に自分の感覚を寄せてしまい、結果として「みんなと同じ感想」が量産される、という指摘だ。僕はまさにこれをやってしまうタイプで、観終わった直後にまずハッシュタグを検索する癖があった。この箇所を読んでから、感想を自分の言葉でメモし終えるまでは、あえて他人の感想を見ないようにするというルールを自分に課してみている。
④「うまく語ること」より「正直に語ること」
最後に印象に残ったのが、独自の視点というのは奇抜な意見を言うことではなく、自分の中の小さな違和感や好き嫌いに正直になることから生まれる、という考え方だった。僕は感想を書くとき、どこかで「賢く見られたい」「うまいことを言いたい」という下心があった。でも本書を読んでからは、多少稚拙でも自分が本当に感じたことをそのまま言葉にするほうが、結果的に「自分らしい感想」になるんだと感じるようになった。
💡 読み終えて、僕が変えたこと
読み終えて一番変わったのは、感想を書く前に一呼吸置いて、「自分は具体的に何にどう反応したのか」を振り返る癖がついたことだ。まだテンプレートのような言葉が口から先に出てしまうこともあるけれど、以前のように「良かった」「泣けた」だけで終わらせることは減った。自分の感想が、他の誰かの感想と入れ替え可能なものではなくなってきている実感がある。
📚 感想を書くたび「これでいいのかな」と思ってしまう人へ
もし、SNSに何か書くたびに「これ、他の人と同じことしか言ってないな」と感じているなら、それはセンスがないからではなく、まだ自分の反応を観察する技術を知らないだけかもしれない。『なぜあなたの感想はふつうなのか』は、その技術をやさしく解きほぐしてくれる一冊だった。感想を発信するのが好きな人ほど、一度読んでみる価値があると思う。
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