言いたいことがあるのにうまく言葉にできない人へ、伝わる言語化のコツを教えてくれる一冊『小学生でもできる言語化』を読んで、難しく話すことをやめた理由
会議で「結局、何が言いたいの?」と言われた日
先月の企画会議でのことです。僕は数日かけて練り込んだ資料を持って、意気込んでプレゼンに臨みました。「潜在ニーズの言語化」「ユーザーインサイトの深掘り」といった、いかにもそれっぽい言葉を並べて説明したつもりだったのですが、聞き終えた上司の第一声は「で、結局何が言いたいの?」でした。
頭が真っ白になりました。自分の中では筋が通っているつもりだったのに、いざ言葉にして人に伝えようとすると、うまく噛み砕けていなかったのです。
その週末、甥っ子に「この前見た映画、何が面白かったの?」と聞かれたときも同じでした。「まあ、テーマ性が深くて…構成も工夫されていて…」ともごもご説明していると、甥っ子はきょとんとした顔で「よくわかんない」とだけ言って別の遊びに行ってしまいました。小学生にすら伝わらない説明を、僕は会社で毎日していたのかもしれない。そう思うと、恥ずかしさと同時に「これはまずい」という危機感が湧いてきました。
そんなときにAmazonで見つけたのが『小学生でもできる言語化』というタイトルでした。正直、大人の自分が読むにはちょっとプライドが刺激されるタイトルだなと思いつつ、逆に「これくらい平易に説明できる技術がまさに今の自分に必要なんだ」と気づき、迷わず手に取りました。
本の紹介
著者の田丸雅智さんは東京大学工学部卒のショートショート作家で、小学校・中学校、さらには少年院でも「言語化」の授業を行ってきたという異色の経歴の持ち主です。この本は、複雑な理論やビジネスフレームワークをたくさん詰め込むタイプの言語化本とは違い、「誰にでも伝わる言葉に落とし込む力」そのものにフォーカスしています。
単なる知識の紹介にとどまらず、実際に手を動かして言葉にしてみるワークが随所に用意されているのも特徴です。子どもに説明するつもりで自分の考えを書き直してみる、という発想の転換だけで、驚くほど文章や話がシンプルになる感覚を味わえます。「難しく言う」ことと「深く考えている」ことは、実はイコールではないのだと気づかせてくれる一冊でした。
心に残った言葉・要点
①「むずかしい言葉を使う人ほど、実はよくわかっていない」
本書では、専門用語や抽象的な言い回しに頼ってしまうのは、自分自身がその物事を本当には理解しきれていないサインだ、という趣旨のことが繰り返し語られます。
最初にこの考え方に触れたとき、僕は思わずドキッとしました。会議で使っていた「潜在ニーズ」「インサイト」といった言葉は、実は自分の中でも輪郭がぼやけたまま使っていたのだと気づかされたからです。難しい言葉は思考の隠れ蓑になっていたのだと、恥ずかしながら初めて自覚しました。
②「主語と述語を近づけるだけで、伝わり方が変わる」
長い前置きや修飾語をこねくり回すよりも、まず「誰が」「どうした」をシンプルに近づけて話すだけで、聞き手の理解度は大きく変わるという指摘も印象的でした。
これを知ってから、資料を作るときも「一文一義」を意識するようになりました。一つの文に伝えたいことを詰め込みすぎず、まず結論をシンプルな一文で置いてから補足する。たったこれだけの工夫で、周囲からの「わかりやすくなった」という反応が増えたのは、自分でも驚きでした。
③「小学生に説明できたら、それは本当にわかっている証拠」
自分の考えを、専門知識のない子どもにも伝わる言葉に置き換えられるかどうかは、自分の理解度を測る一番シビアなテストだ、という考え方です。
この一節を読んでから、企画を練るときに「これ、甥っ子に説明できるかな?」と自問するクセがつきました。説明できないときは、たいてい自分自身がまだ考えを整理しきれていないときです。難しい言葉に逃げずに、平易な言葉で説明し切れるまで考え抜く。この習慣が、思考そのものを深めてくれることに気づけたのは、この本のおかげです。
④「言葉にする前に、絵や例えを思い浮かべてみる」
いきなり文章にしようとせず、まず頭の中に具体的な情景やたとえ話を思い浮かべてから言葉にする、というアプローチも新鮮でした。
僕はこれまで、考えをまとめるときにいきなり文章化しようとして、抽象的な単語をこねくり回して行き詰まることが多かったのですが、「まず絵を思い浮かべる」というワンクッションを挟むようになってから、言葉が驚くほどスムーズに出てくるようになりました。ショートショート作家である著者ならではの、物語的な発想法だと感じます。
読み終えての決意・変化
読み終えてから、僕は資料やメールで専門用語をむやみに使うのをやめました。代わりに「これは小学生にも伝わる言い方かな?」と一呼吸置いて確認するようにしています。最初は物足りなく感じるくらいシンプルな言葉を選ぶようにしたのですが、不思議なことに、周囲からの反応は以前よりずっと良くなりました。
甥っ子に映画の感想を聞かれたときも、今なら「ちょっと変わった主人公が、最後にすごく成長する話だよ」くらいまで削ぎ落として伝えられる自信があります。難しく話すことは、決して頭の良さの証明にはならない。そう気づけたことが、この本を読んで得た一番の収穫でした。
締めくくり
「言いたいことはあるのに、なぜかうまく伝わらない」というもどかしさを抱えている方は、きっと僕だけではないはずです。会議での説明、家族との会話、SNSでの発信まで、「伝える力」はあらゆる場面でついて回ります。もし難しい言葉で自分を大きく見せようとしてしまうクセに心当たりがあるなら、『小学生でもできる言語化』はきっと肩の力を抜いて言葉と向き合うきっかけをくれる一冊だと思います。
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