「成果を出すほど、なぜか心がすり減っていく」と感じる人へ。『THE BEST WORK「最高の仕事」を生きる』を読んで”奪う”働き方をやめる決意をした理由
😮💨 昇進してから、笑えなくなった話
数字を達成すればするほど、職場の空気がぎすぎすしていく——そんな感覚に覚えはないでしょうか。
僕は数年前、チームのリーダーを任されるようになってから、社内の評価基準が急に生々しく見えるようになりました。誰がどれだけ数字を持ってきたか、誰の手柄で誰の失点か。会議の場で、明らかに部下の頑張りだった成果を、上司が自分の手柄のように報告しているのを見たときは、正直かなり嫌な気持ちになりました。でも同時に、「自分もいつかああやって立ち回らないと生き残れないのかもしれない」という恐怖も感じていたんです。
結果を出すこと自体は好きなはずなのに、周りを出し抜いてでも勝たなければという空気の中にいると、達成感よりも先に消耗が来る。そんなモヤモヤを抱えていたときに手に取ったのが、実業家であり長年ベンチャー投資・国際的な財団運営に携わってきた原丈人さんの『THE BEST WORK「最高の仕事」を生きる』でした。
📖 「与える人」か「奪う人」か、という一つの物差し
この本の軸になっているのは、人を「与える人(ギバー)」と「奪う人(テイカー)」のどちらとして働いているか、という問いです。ただし精神論で「与えましょう」と説くのではなく、競争の激しいビジネスの世界で実際に結果を出してきた著者自身の経験から、誠実さを保ったまま働き続けるための具体的な自問の形として整理されているのが特徴です。
読み始めてすぐに感じたのは、この本が「良い人でいれば報われる」という単純な話をしているわけではないということでした。奪い合いの構造がある世界だと認めた上で、それでも自分がどちら側に立ちたいかを、日々の判断の中で問い続けることの大切さが書かれています。知識として読むだけでなく、明日からの自分の振る舞いを見直すきっかけになる一冊だと感じました。
① 「勝つこと」と「奪うこと」は同じではない
まず刺さったのは、勝つために誰かから奪う必要は本来ないはずだ、という考え方でした。僕はそれまで、競争に勝つというのは限られたパイを誰かより多く取ることだと無意識に思い込んでいました。
でも本書を読んで、成果というのは奪い合わなくても生み出せる余地が実はたくさんあるのに、目先の勝ち負けにとらわれるとその余地が見えなくなってしまうのだと気づかされました。あの会議で見た上司の振る舞いも、もしかしたら「奪わないと自分の評価が守れない」という思い込みからくる焦りだったのかもしれない、と少し冷静に捉え直せるようになった気がします。
② 「誠実さ」は弱さではなく、選び続ける強さ
次に印象に残ったのが、誠実であり続けることは決して弱さの証明ではなく、むしろ状況が厳しいときほど選び取るのが難しい、強さの表れだという指摘です。
僕はどこかで「誠実な人ほど損をする」という諦めのような感覚を持っていました。でも本書では、誠実さを保てなくなる瞬間というのは、たいてい余裕がなくなったときだと語られていて、これは自分にも思い当たる節がありました。忙しさや焦りに飲まれたときほど、自分の判断が雑になり、人を出し抜くような選択に流されやすくなる。だからこそ「誠実であるかどうか」は、性格の問題ではなく、日々の自分への問いかけの積み重ねなのだと捉え方が変わりました。
③ 自分に問い続けることでしか、ぶれない軸はつくれない
本書のタイトルが示すように、この本の核は「最高の仕事とは何か」を自分自身に問い続ける姿勢そのものにあります。答えを一度出して終わりにするのではなく、状況が変わるたびに繰り返し自問することが前提になっている点が印象的でした。
僕はこれまで、一度「自分はこう働きたい」と決めたら、それをずっと守り続けられるものだと思っていました。でも実際には、忙しさや評価へのプレッシャーの中で、その軸はいとも簡単にぶれてしまいます。本書を読んでから、週末に「今週の自分の判断は、誰かから奪う方向に傾いていなかったか」と振り返る時間を意識的に取るようになりました。まだ完璧にはできていませんが、問い直す習慣自体が、ぶれを小さくしてくれている感覚があります。
④ 結果を出すことと、誰かを踏み台にすることは選べる
最後に強く残ったのが、結果を出すための道は一つではない、という視点です。誰かを踏み台にして成果を上げるやり方も、周囲と共に成果を積み上げるやり方も、どちらも「結果を出す」という点では同じに見えるかもしれませんが、そのプロセスで残るものはまったく違う、という考え方です。
僕は正直、これまで後者のやり方は「時間がかかって非効率」だとどこかで見下していたところがありました。でも本書を読んでからは、短期的に効率が良く見える奪い方は、長期的には信頼という一番大事な資産を減らしていくのだと感じるようになり、目先の効率だけで判断することへの違和感を持てるようになりました。
💡 読み終えて、僕が変えたこと
読み終えて一番変わったのは、「勝つためには多少強引でも仕方ない」という思考のクセに、自分でブレーキをかけられるようになったことです。会議で誰かの手柄を横取りしそうな場面や、忙しさを理由に人への配慮を後回しにしそうな場面で、「これは奪う選択だろうか」と一瞬立ち止まる癖がつきました。
すべての判断で理想的に振る舞えているとは言えません。それでも、成果と誠実さのどちらかを諦めるのではなく、両方を問い続けること自体に価値があるのだと思えるようになったのは、この本を読む前の自分にはなかった変化です。
📚 競争の中で消耗している、あなたへ
もし今、数字は出ているはずなのに心が満たされない、あるいは勝つために誰かを踏み台にすることに違和感を覚えているなら、その感覚は間違っていないのかもしれません。
『THE BEST WORK「最高の仕事」を生きる』は、奪い合いの構造がある世界だからこそ、誠実であり続けるための問いを自分の中に持つことの大切さを教えてくれる一冊です。競争的な環境で働くすべての人に、一度手に取ってみてほしいと思います。
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